【ブックオフ】が起こした古書店革命
チェーン展開するのが難しいと言われていた古書店業界において、初の全国チェーン展開に成功したブックオフ。現在でも古書店業界において圧倒的なシェアと存在感を見せている同社の飛躍は、いったいどんなアイディアによるものだったのでしょうか?今日はその秘密に迫ってみたいと思います。
ブックオフ飛躍の理由
一般的にブックオフがチェーン展開できた成功要因は、以下のように考えられています。
・コンビニのようキレイな店舗
・ロードサイド型の大型店舗
・100円特化コーナーの定番化
・立ち読み自由
・やまびこ挨拶の導入
・スーパーのような接客の導入
それまでの古本屋の形をうち破り、「新古書店」と呼ばれる新しい古本屋の形態を作り上げた。店内はコンビニエンスストアの様な照明にし、店舗面積を広めにとり、さらに商品の臭いを抜くための対策を施し、古本業界ではタブーであった立ち読みも可能にした。これが受け入れられ、チェーンが爆発的に全国へと広がった。
しかし、専門家筋の話を総合すると、少々話は違うようです。
東京都三鷹市の古本屋、BOOKS三鷹の店長は以下のように指摘します。
「実は古本屋がチェーン展開出来ない一番の原因は、本の査定をするスタッフの教育に時間がかかる事です」
確かにブックオフ以前の古本屋は、査定ができる古書に精通したスタッフが絶対に必要でした。古本屋のチェーン展開にはこの人材育成がネックになっていたのです。
しかし、ブックオフは驚くべき斬新なアイディアでこの問題をクリアしました。
ブックオフが辿り着いたアイディア
それは、それまでの常識を100%覆すものでした。
【本の状態だけで査定をする】
それまでの査定の常識だった、著者・内容・歴史・版数を一切無視し、もしキレイな文庫本であればAランクの30円買取。本が傷んでいたらCランクの10円買取。このような見た目だけで査定できる簡単な査定方式を導入したのです。
この査定方式は、当時の古書店主や古本屋の愛好家にはとても受け入れがたいものでしたが、マニアでない一般の顧客にとっては問題では無かったようです。むしろ、もう読み終わってしまった必要の無い本を買取ってもらえるわけですから、例え20円でも喜んで引き取ってもらっているようです。
これは店舗運営としても効率的でした。ベテラン店員が1,000册近くの本を一冊ごとに査定をするのはとても時間がかかる作業でした。当然素人には不可能です。しかし、見た目だけの査定方法であれば、ベテランスタッフと新人スタッフが一緒に作業をすれば、あっという間に終わります。
ブックオフはこの査定方法を導入する事によって人件費を抑え、人材育成のスピードを効率化し、一気に爆発的な全国展開化に成功しました。消費者は想像以上に安く売る事に抵抗は無く、古本でも良いから安い本の購入を望んでいたのです。
残った問題点
しかし、この査定方法には賛否両論もありました。
処分される価値ある本
どんなに価値がある本でも、ブックオフに持ち込まれた時に状態が汚れていたら、処分されてしまいます。スタッフが本の価値を理解していないからある意味当然です。
万引きチェックの甘さ
残念ながら新人スタッフは、買取った本が盗品かどうか見分ける事ができません。もしわかったとしても、女子高生スタッフが盗品の買取拒否をする事は難しいでしょう。こういったこともあり、「ブックオフが進出した街の古本屋は潰れる」とまで言われました。
売れなくなった新刊本
新古書店であるブックオフが出店の勢いを増せば増すほど、当然ながら新品の本が売れなくなりました。これはブックオフだけのせいではありませんが、出版業界からは目の敵にされました。「立ち読み自由」にしてしまったのも問題だったようです。
最後に
とはいえ、キレイな本を安く販売できるシステムを考案したブックオフ。業界の慣習を打ち破った斬新なアイディアで大成功を収めた、日本を代表する企業だといえるでしょう。
現在では、ブックオフを批判していた出版業界自らがネットで無料でマンガを読めるようにしています。これはブックオフの”先見の目”とマーケティングの勝利とも言えるでしょう。